現状の医療政策からみた対応方法を考える

〔現状の政策〕

 2018年度に発表される医療政策の主なものは、「療養病床の転換」「地域医療計画」であり、それに伴って「医療機能の明確化」と「在宅医療」の在り方です。

 

〔療養病床の転換〕

 「療養病床の転換」については、医療療養病床のうち看護体制25:1、それに、介護療養病床については、転換が求められていますが、審議会では、転換反対の声もあります。しかし、転換する施設の案は、3案が提示されており、反対意見がある中で転換施設の内容が検討されている状況で、転換についての方向性が明確になっていない状況です。

 したがって、病院経営者としては、新たな施設内容が発表されても猶予期間が3年間から6年間を設けると言うことでしたので、新たに提案される施設の内容を理解するとともに、実際に「どの施設内容が現状の患者へ対応できるか」と「10年後でも健全経営が行えるか」を検討することが必要です。予定では、来年3月までには内容が発表されますので、決定まで待つことが必要だと考えます。但し、事前の調査や検討は必要です。

〔地域医療計画の行方と病院経営〕

 「地域医療計画」は、2018年度に発表される事となっていますが、この計画の基となる「地域医療構想」については、都道府県によってはすでにの発表されている所もあり、この内容に沿って計画が策定される予定です。地域医療計画の発表後、次回の改定は、6年後(3年後に見直し)となっており、病院経営にとって地域医療計画は、今後の経営に大きな影響を与えることは必須だと言えます。

 6都道府県を除けば、病院機能は過剰であり、削減の方向性が明確となることは当然と考えます。したがって、病院経営者にとっては、現状の診療体制を転換を余儀なくさせられることも考えられ、計画の内容を把握することは重要です。それに、自病院の位置づけを検討し、診療体制の変更が必要なのか、現状のままでよいのかを決断することが求められます。決断する期間は、最短で1.5年間です。

 特に、検討を要する診療体制は、一般病院であり、検討する内容は「院内の診療体制」「患者の動向」の二点です。「患者の動向」は。当然のこととして診療圏の患者の状況及び地域における医療機関の動向の調査と検討であり、それが自病院の将来の在り方をに結び付きます。

〔医療機能の検討の基本的考え方〕

 2018年度に発表される「地域医療計画」の設定と診療報酬改定では、4つの医療機能がより明確になると考えますが、特に、一般病院の機能については、「社会的入院の排除」を目的として厳格化されることが明確となっています。現在は、医療機能の区分を「医療資源投入量」で行っており、現時点で入院している患者の容態で判定していると考えます。しかし、2018年度以降の種々の医療政策が実施された場合を想定して、入院する(できる)容態の患者を継続して入院させることができるのか、また、その患者を自宅や他施設等へ退院又は転院させることができるのかを検討することが必要です。

 つまり、病院の医療圏の住民の動向や連携できる医療機関等の施設を確保できるのかを検討することが重要だと言えます。(地域医療体制の構築)

〔地域包括ケアシステムを考える〕

 2018年度までに「地域包括ケアシステム」を構築し運用を開始することが、一つの目標となっていますが、「地域包括ケアシステム」を運営を担う市町村の「地域包括支援センター」の業務内容が、次第に拡大し、質的に高くなっていることから、市町村によっては、「地域包括ケアシステム」を構築し運営することが困難な状況になっているのではないかと考えています。

 「地域包括ケアシステム」における医療は「在宅医療」を、介護は「在宅介護」を中心として展開されると考えられていますが、「かかりつけ医」の協力(役割)なしでは、機能しないと考えます。

 また、この「在宅医療」「在宅介護」を行うためには、「地域包括ケアシステム」内において、患者や利用者(高齢者)の情報の共有化が必要だと考えています。つまり、共有できる情報を作成し管理運営することが重要になり、「地域包括ケアシステム」の構築と運営には欠かすことができないものになると考えます。

〔現状から見た病院経営の方向性〕

 現状の厚生行政からだされる医療政策から考えられる、今後の病院の経営の方向性は、「病院」としてどのような機能・役割を担うようにするのかを検討することが重要です。また、病院として検討しなければならないことは、厚生行政の政策を把握することは無論ですが、自病院の診療体制の見直しを行い「長所と課題」を明らかにすることです。さらに、自病院の医療圏における人口動態、及び、他医療機関等の動向を把握することが基本と言えます。

今後の病院経営の方向性

 厚生労働省では、2025年頃までに現在指摘されている課題の解決に向けて「機能分化」「連携による医療と介護の体系」を構築するといわれています。

 したがって、医療機関では、将来どのような医療を展開するのかを明確にした上で、今後の政策の動向やその他の環境変化を捉えながら改善や改革を進めることが重要になると考えます。

 このような医療機関を取り巻く環境変化へ対応するためには、「経営組織体制を強化し」「組織を活性化させること」が必要となります。すなわち、改善や改革を行う全ての職員に重要な役割を担ってもらうこととなります。このことは、職員の能力向上が医療機関の生き残りを左右すると言っても過言ではありません。それゆえ、これからの病院経営は人材育成がカギを握るといえます。

人材コンサルティング(経営改善と人材育成)

1.経営組織診断に基づく経営組織の実態把握と改善点の提示、実行支援

 

2.教育体系の整備:経営組織高度化に向けた対応

 

3.QC活動展開:経営組織活性化に向けた対応

 

4.人事考課:各人別目標設定と教育体系の活用

 

5.BSC活動展開:経営改善と職員の能力高度化

 

6.その他:給与体系の見直しと改善、職務規程等の作成他

2025年に向けたビジョンはありますか?

療養病床・慢性期医療の在り方の検討を受けた新たな選択肢
厚生労働省の有識者検討会は1月15日、全国の約33万床の療養病床のうち14万床を2017年までに廃止するという方針を踏まえた上で、入院中の高齢者が医療・介護難民とならないような受け皿として新たな施設案を提示しました。慢性期医療を担う医療機関にとっては今後自施設をどのようにすべきかの検討が急がれます。
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慢性期入院医療の動向とゆくえ
療養病床にとって在宅復帰機能加算がとれるような機能をもつことが今後の運営の基本となると考えます。それには、医療と介護の連携促進が不可欠です。
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一般急性期病床の動向と今後のゆくえ
平成26年3月~平成27年4月間で7対1入院基本料の届出病床は減少しています。「重症度、医療・看護必要度」の基準を満たしていないことが理由です。基準は今後も厳しくなることが予想されます。地域における患者の医療ニーズや地域医療構想の関連等を考慮しながら自病院の方向性を考えていくことが重要です。
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これからの経営を行う上で考慮すべきこと
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今後の医療経営の方向性を考える
厚生行政から矢継ぎ早に出された情報を読み解きました。医療機関や介護事業者が2025年に向けて、ビジョンを描くための一助としていただきたいと思います。
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